Vuelta a Espana 1994
(1)Granada
スペインの夏は暑いのではないかと思います。たぶん、もうどうしようもないくらい暑いでしょう。
Romingerが圧倒的な力を見せつけた1994年のVuelta a Espanaは、4月から5月の初めにかけて行われていました。
車はまばらで、やたら広い高速道路の頭上に時折現れる温度計は、とっくに30度を越しています。スイスで借りたレンタカーは、幸いにしてエアコン付き。車から出ない限り快適です。空気がやたら乾いているのは、日陰に入ったとたんに灼熱から解放されることから判ります。もっとも日陰なんてないに等しいのですが。
FranceからEspanaに入って内陸の方へ車を走らせば、荒涼とした風景が目の前に次々と、終わりなく現れてきます。まばらに生える木とオリーブ、葡萄。人の気配のない町。乾いた空気。
暑さをしのぐためか、岩肌に穴を穿ち住居としている界隈(地域と表現すべきかな?)ではbar(バール = 喫茶店?)がオアシスの役目を果たします。
かのオアシスでは、ぐい飲みのような小さな容器で飲むcafe(カフェ = コーヒー)だけでなく、よく冷えたcervesa(セルベッサ = ビール)、vino(ビノ = ワイン)なんかもあります。つい飲んでみたくなります。道路は広いし、車もほとんどいないから大丈夫じゃないか?もしかしたら道路が広いのはその為も有るんじゃないかと思ってしまいます。
barとドア一つ隔てたrestaurante(レスタウランテ = レストラン)では家族連れが昼食の真っ最中。テーブルの上には勿論vino tinto(ビノティント = 赤ワイン)。どうするんや店の前の車あんたらのやろ?・・・・・んん・・・・うらやましい。
「私は今、ヴェルタの6etappa Sabado,30 de Abril(6ステ−ジ 土曜日,4月30日)を見るためにこの道に入ったんや、今日は金曜日、こんなところで酔う訳にはいかん!」
後ろ髪を引かれる想いで、気持ちをそこに35%ぐらい残し、「髪を引っ張るんじゃねぇ!お願いだから。」と車に喝を与えて立ち去りました。
人気なんて全くの皆無。車がたまに遙か彼方から疾走して来る以外は、動物さえも「暑いのはいやや、晩まで待とう」と言ったかどうかは定かでないが、全く姿を見せない。とっくの昔にautovia(或いはautopista = 高速道路、幹線道路)をはずれている。2車線ながらこの準幹線道路はやたら広いのです。
スイスのレンタカーは、カーステレオが標準装備なのでしょうか、オートマチック車だからでしょうか。退屈しのぎ、眠気よけの為に、持ってきたカセットテープを入れて聞く。そのうち・・・・オートリバースが2回目に入って・・・・次のカセットテープがまた2回目に入った頃・・・・なーんだか寂しくなりました。なーんだか虚しくなってきました。「ヴェルタの6etappa Sabado,30 de Abril(第6ステ−ジ 、4月30日、土曜日)は明日や!ここで落ち込んでたらいかん。」心に鞭を当て、カセットテープを道端で奥深く、二度と取り出せないくらい深く隠してしまいました。
日本に帰ってからも1年くらいはそのアーチスト(そう、アーチストです)のアナログディスク、CDに触れませんでした。筑紫哲也(テツヤはこの字かなぁ)もかつてそのアーチストをNHK BS2で特集していたときに「モスクワの寂れたホテルで、カセットテープを聞いてたら何とも寂しい気持ちになりました。」というようなコメントをしていました。
そのアーチストは?判った方もいるでしょうねえ。そう「中島みゆき」ですワ。
「森田童子」だともっとすごいでしょう。オートリバースが2回目あたりで「もういいわ、Granadaはあさってにしよう。今日はこのあたりで、理由なき涙の海におぼれよう。Hostal(オスタル = 宿泊施設、飯付き)もあるし、ああ疲れた。」となるのは99.9999%請け合いです。
そんなこんなで、荒野に忽然と現れた、そびえるアンテナタワーにクロス旗を掲げたCruz Roja(クルス・ロハ=赤十字)の基地を視野の片隅に認めながら、Granadaへ。
立体交差にさしかかると、人だかり、皆さん下の道路をのぞき込んでいらっしゃる。ラテン名物の路上駐車も沢山。もうGranadaに3/4くらい足を踏み込んでいる。Vueltaの集団がゴールまで10kmを疾走中。明日からが楽しみです。
道端で果物を売ってたなあ。どんな味やろ。食べてみたいなあ・・・・
今夜のねぐらは、郊外の道路脇にあるキャンプ場。車がうるさい。大きな川に面していて眺めは良い。
イスラム圏にも赤十字と同じ組織はあるようです。旗は「星に三日月」
Vuelta a Espana 1994/(1)
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