Tour de FranceのEPO検査
追情報もいただきました。
PC12さんありがとうございます。
3 July 2000

さて、自転車競技には欠かせない(?)ドーピング問題ですが、個人的にはかな り興味深く見ています。
最近の重大ニュースは、合成エリスロポイエチン(Epo)の検出法が実用化さ れたということです。
ついに!という感じです。

ご存じのように、Epoは体の中で生理的に分泌されているホルモンのため、今 まで はEpoを注射してもそれを生理的に分泌されているEpoと区別はできなかっ たわ けですが、今回、その両者を区別する方法が開発され、注射したEpo(合成E p o)の存在を尿の中に検出することができるようになりました。

これからはEpoを注射するとばれます。

科学雑誌「Nature」6月8日号にこの検査方法が簡単に紹介されていま す。
検出方法は、合成Epoと生理的に分泌されているEpoのわずかな分子の構造 の違いを利用して、構造が違うと電位をかけた場の中での移動の速さが異なる(電気 泳動)原理を利用するものです。

この論文中には、大スキャンダルになった例の1998年ツール・ド・フランス で、 Epo使用疑惑により出走停止となった選手の(ヴィランクでしょうか?)尿の サン プルの検査結果が出ていますが、合成Epoがしっかりと検出されていて、おお〜っ という感じです。
これなら言い逃れはきかない気がします。

さっそく今年のツール・ド・フランスでこの検査が実施されるようですね。
ただし検査に時間がかかるため、全選手の尿のサンプルを冷凍保存しておいて、 ヘマトクリット値などからEpo使用疑惑が起こった選手のサンプルだけを後から調 べる、という形になるようです。
レース終了1ヶ月後に優勝者が失格なんていう興醒めなことがおきるかもしれま せん。

パンターニのドーピング疑惑に関しても、保存されているだろうパンターニの尿 のサンプルを調べたら決着が着くでしょうね。イタリア自転車協会がどう出るかです が。

  追情報
昨日のガゼッタの記事によると、新しいEpoの検査を今年のツールで行うこと に、UCIはOKを出しましたが、CIO(国際オリンピック委員会)がまだ承 認していないということです。
検査の妥当性と、検査を行うパリのChatenay Malabryのラボが適切かどうかを検 討中なんだとか。
したがって、CIOの承認が出るまで(出るだろうと予想され てはいますが)選手の尿サンプルは凍結したまま検査が行えません。

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ガゼッタの記事の訳です。

「問題の核心は、Chatenay Malabryのラボが国際オリンピック委員会の科学コミ ュニティーと担当者にまだ受け入れられていないという事実にある。
尿中の合成Epo検出の革命的方法の導入には異議はないようだが。
したがって選手の尿は、Lasne博士の検査が受け入れられるのを待って、冷凍さ れておかれる。あらゆる決定はその時まで保留である。
そして疑惑がキノコのようにニョキニョキと出てきている。
はっきりしているのは、これからは選手は、もし尿中や血中にコルチコステロイ ドやPfc(perfouorocarburo:パーフルオロカーボン)が検出されたならば、 容易に検出できる従来の合成ホルモンによるドーピング同様に、重い処罰が下さ れる可能性があるということ、そしてヘマトクリットの値だけでなく、ヘモグロ ビンの値が正常域を越えたら出走停止になりうるということである。」

パーフルオロカーボン:
(ご存じでしょうが)輸血による感染と血液の不足の問 題を解決するためため合成血液の開発がされていますが、パーフルオロカーボン は、ヘモグロビンの代わりをするものとして開発されました。新しい血液ドーピ ングになりうるとして注目されています。

Lasne博士:
合成Epoの検出法は、Chatenay MalabryのNational anti-doping laboratoryのF. LasneとJ. Ceaurrizの名前で発表されています。

PC12
kam@kuaccm.med.kyushu-u.ac.jp

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